メルマガ色鉛筆第198号「withコロナレポート」

タイトル 「withコロナレポート」
ペンネーム 赤い靴のバレリーナ(50代 女性 弱視)
★レポートの要旨です。
 2020年、ウイルス感染予防をしながらの新しい生活様式が求められています。
いろいろなアイデアや挑戦が提案されてもいます。
見えない・見えにくい中での新しい生活様式とはどんなものでしょうか。
ハイテクとアナログ、いろいろやってみて感じたことをお話します。
★ここから本文です。
 2020年、待ちに待ったオリンピックYear。期待に胸膨らませ楽しみにしていた
のは私だけではなかったと思います。
1月下旬、国内最初の新型コロナウイルス感染者がみつかり、みるみるうちに事態は
深刻化していきました。
有名人がこのウイルスの感染によりお亡くなりになったことにもショックを受けまし
た。
かつて経験したことのない見えないウイルスの脅威、いつ感染するか、感染させてし
まうかという恐怖におびえる日々になりました。
とうとう4月7日には、首都圏を中心とした「緊急事態宣言」が発令され、私の住ん
でいる街もその対象地域になりました。
スーパーやコンビニ、ドラッグストア以外の店の明かりは消え、一夜にして街の様子
が一変しました。
店の棚からはマスクや消毒液、紙製品をはじめとする品物があっという間に消えまし
た。
スーパーは品物を求めて並ぶ買い物客でごった返し、パニックに陥りました。
毎日ぎゅうぎゅう詰めの電車に乗って、ホームから転落しないように
細心の注意を払っていた通勤風景は、がらりと変化しました。
働く人もテレワークや自宅待機に移り、街は静まり返ってしまいました。
不要不急の外出を自粛する流れになり、あらゆる行事が中止になってしまいました。
一生に一度しかない子供の卒業式も入学式も中止になってしまい、
何ともやりきれない思いになりました。
連日、あらゆる新型ウイルスの報道が飛び交い、何が正しくて、正しくないのか
情報に惑わされることもありました。
感染への恐怖から心身ともに疲れはピークになっていきました。
4月下旬になり、やっと職場から特別休暇をもらえるようになって、正直ホッとしま
した。
毎年この季節は、木々の生命力を感じ、太陽の光を浴びた新緑はキラキラと輝き、
吹き抜ける風は清々しさを感じる気持ち良い季節です。
同じはずなのに、今年はいつもと違う春でした。
外出自粛になり、家での時間はゆっくりと流れ、
同じ時間を過ごしているとは思えないほどの感覚になりました。
 Stay Home、さて何をしよう。
ずっと気になりつつ放置し続けた家の断捨離を始めました。
幼い頃の子供の洋服、CDや本、ゲームのソフト、もらった景品や非売品のグッズなど

とりあえず捨てるのを迷い、しまい込んで忘れていた物がたくさん出てきました。
あの有名なメルカリに、家族の協力のもと初出品してみたところ、
今は使っていない携帯電話のケースや充電器、使いかけの化粧品なども、
「こんなものが!」と驚くようなものまでが売れ、新しい持ち主の元へと
旅立っていきました。
 時間がたっぷりあるのでストレスフリーです。
今までよりワンランクアップした料理が食卓に並ぶようになりました。
普段なら、筍は水煮を買ってくるところですが、生筍を購入し、あく抜きから行い、
筍ご飯や煮物などを作りました。
いつもはチューブのショウガを使っていますが、自分ですり下ろしたりもしました。
酢豚は豚を揚げるのが大変なので、
日ごろはスーパーの総菜売り場のからあげで代用して作っていました。
時間と手間をかけて酢豚を作るぞと、豚肉をから揚げし、Cook Doを使わず、
自分で手作り甘酢あんを作りました。
カレーも一手間かけましたよ。
薬味のニンニク、ショウガを炒め、香りが出たらクミンを加えて炒めます。
こうすると市販のカレールーでもワンランクアップの味になります。
酢の物も便利な合わせ調味料を使わず、自分で味付けしました。
朝ご飯もちょっとアレンジを加えました。
フレンチトーストにコーヒーを加えてカフェオレ風にしたり
バナナとパンをサイコロ状に切って、フレンチトーストの液体につけ、
手でおにぎりくらいにまとめて160度のオーブンで10分くらい焼いてみたり。
お菓子はほとんど作らないのですが、ホットケーキミックスを使ったバナナケーキや

ヨーグルトホットケーキ、クッキー、プリンなど簡単なものを作っていました。
あと、焼き芋も作ったなあ。
こうして書いてみると、いつもはやらないことをやっていたなあと、
今更ながら気づかされます。
 ただ最近は、皆が巣ごもり生活で同じことをしているようで、
スーパーやネットでのお菓子作りの材料調達が難しくなっています。
運動量が減っていても、お腹が減るのはいつもと一緒で、
家にいて楽しむことといえば食べることになってしまい、ついつい食べ過ぎてしまう
ので、コロナ騒動が終息したころには、いったいどうなっているんだろうという心配
も頭をかすめます。
 他にも変わったことといえば、オンライン化の波が押し寄せてきたことです。
子供たちの学校ではオンライン授業が始まり、軌道に乗るまで学校も子供たちもバタ
バタしました。
視覚障害の業界でも、Zoomなどを利用した会議やウェビナーや飲み会、おしゃれマル
シェ、ヨガなどが開始されました。
他には、Lineを使ったグループチャットでのつながりだったり、買い物など、家にい
ながらにして大体のことがオンラインで済ませられるようにもなってきました。
移動の負担がなく、時間とお金の節約ができ、うまくやりくりすれば一日にしていろ
いろなイベントのかけもちが可能になります。
移動にバリアのある視覚障害者にとって、オンラインはうまく活用すればとても便利
なツールになると思います。
 その一方で、ITが使えなかったり、あまり得意でない視覚障害者は、どんどん置い
てきぼりになっていくような懸念も感じます。
オンラインは使いこなせるようになるには、勉強や研究が必要です。
スクリーンリーダーでの設定はなかなかうまくいかなくて、晴眼の家族にお願いする
こともあります。
家族が簡単に設定を完了するのをみると、見えていたらさぞ便利なんだろうなと、う
らめしくも思います。
 ハイテクだけでなく、アナログな工夫もしましたよ。
アロマスクールで作った除菌アロマスプレーをいつも持参し、こまめにシュシュと手
指の消毒に努めています。
天然由来で、香りもいいので癒しの効果もあります。
 直接の感染予防対策ではないのですが、気持ちも沈みがちになる今、少しでも明る
い色の洋服を着て気持ちが上がるようにしています。
アロマの入った入浴剤を入れたお風呂にゆっくりつかってよく寝るというのも、ゆっ
たりとした時間がある今だからこそできたことですね。
 近頃、感染防止のためによく聞くソーシャルディスタンス。
ガイドや同行援護を使わないと外出が難しい視覚障害者は、とても大変です。
同行援護を使わないまでも街の中でちょっとだけサポートをお願いしたり、電車やバ
ス、エレベーターなどの空間で、隣にいる人とどのくらい距離をとったらいいのか、
本当に悩ましいところです。
職場の中でも、対面で長時間の会話も今までのようにはできない雰囲気もあり、寂し
さも感じています。
最近お店のレジの前には透明シートが貼られ、ただでさえ見えにくい私は、シートが
あることに気が付かず初めのうちは戸惑いました。
お互いにマスクをしているので、何を言っているのか聞き取れないことも多く、全神
経を集中させる必要があったり、ついつい前のめりにならざるをえなかったり、レジ
待ちの列では離れて並ぶよう床に目印があることも気が付かなかったり。
パンや総菜売り場では、商品に透明シートがかけられたり、パックに入っているため
わかりにくく、ますます買い物がしづらくなりました。
商品が見えにくいため、片っ端から手を伸ばし、品物を目の前で確認するような行動
も、今となってはちょっと控えた方がいいかなと躊躇したりもしています。
 他に変わったことといえば、サピエでの読書やラジオを楽しむようになったことで
す。読んだことのなかった著者の本に挑戦したり、ラジオ番組もよく聞くようになり
、今まで知らなかった世界が広がりました。
少し前までは、普通に買い物や外出をしたり、人に会って飲みに行ったり、当たり前
のようにできていたことができなくなり、視覚障害になった時の思いと重なりました

普通のことが普通にできることがいいなとしみじみ思っています。
以前のように家族以外の人と会う機会が激減し、刺激が少なくなったせいか、少し気
力の減退も感じながら、ゆっくりした時間が流れるStay Home生活もまんざらでもな
いと思っている今日この頃です。
 今はオンラインでのミーティングが盛んなので自分がホストとして開催できるよう
、練習したいなと思っています。
iPhoneなどでは、操作が簡単なのですがPCで同じ会議システムを使おうとしても難し
く苦戦しています。
スムーズに使えるようになったら、タートルの会で全国オンライン女子会がしたいで
す。
 仕事面でもオンラインを導入できればいいのですが、なかなかセキュリティーなど
の問題などもろもろあり、今は難しい状況です。
 with コロナ、まだまだ長期戦になり、生活様式の変化が求められると思います。
むやみに怖がるだけではなく正しく情報を判断し、いまできるところで、少しでも楽
しく快適に暮らせるよう、毎日を過ごせたらと思っています。
編集後記
 当たり前だった日常ががらりと変化した時、その状況がどんなものなのか、わから
ないことで不安が増します。
そんな中、どうにかやってみたこと、外出が自粛だったからこそできたことを語って
いただきました。
昨日までの当たり前がちがってしまう、この経験が視覚障害になった時と重なったり
、簡単便利というものを手にするのにやたら苦労したり、
「見えてさえいれば」この思いもよぎりながらのおうちライフでした。
一方、急に日常が変わってしまうというかつての経験は、たくましさをも生んだよう
です。
そして、苦労もあるけどやってみようという力強さにもつながっているようです。
見えない・見えにくい私たちの新しい生活様式、色鉛筆でまたいつか。
このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2020年7月10日
☆どうもありがとうございました。


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