メルマガ色鉛筆第155号「ひとひら」リレーエッセイ11」

タイトル 「ひとひら」リレーエッセイ11」
メルマガ色鉛筆編集チーム
 こんにちは、メルマガ色鉛筆編集チームです。
 今号は、しりとりスタイルのタイトルでリレーエッセイをお届けします。
暮らしの中の体験ひとひら、記憶ひとひらをつなぎます。
 152号の「人間万事塞翁が犬」、「ぬくもり~娘からのメッセージ~」のバ
トンを受けて、
「人生はじめての」、「ノックアウト」というタイトルでのエッセイです。
タイトル 人生はじめての
ペンネーム ゆうやみ(30代 女性 歩行訓練士)
 去年の秋ごろ、インフルエンザの予防接種を受けました。
注射は怖いけれど、社会人になってからほぼ毎年職場で受けていました。
予防接種について特に何か考えることもありませんでした。
注射針が入ってチクッと痛くて、すぐに終わってカットバンを貼ってもらったと
ころまでは同じでした。
しかし、しばらくするとそれまでと違うことが起きました。
昼のお掃除をしなくちゃと思って、注射の跡を押さえながら階段を上がっていき
ました。
すると、どんどん呼吸が苦しくなって、胸がドキドキしてきて、
ドキドキを通り越してバクバク、痛みも感じ始めました。
階段を上りきるのがやっとでした。
職員の部屋のドアを開け、椅子に倒れこみ机に突っ伏したまま、動けなくなりま
した。
「ちょっと掃除はできそうにないな」と、暢気なことを思い浮かべながらも、胸
が痛くてたまりません。
息が苦しくてどうにもこうにもなりません。
「これは本格的に危ないかも知れない。どうしよう」と焦りが増してきました。
上司が部屋に入ってきて「どうしたの!」と声をかけてくれました。
しかし呼吸が乱れて、私には声もまともに出せませんでした。
どうにか、予防接種を受けた直後にこうなっている、というようなことを伝えら
れました。
幸い医師と看護師がまだ職場に残っていらっしゃったので、すぐに呼んでもらう
ことができました。
さらに職場に常勤している看護師も駆けつけてくれました。
私を横にしてくれて、いろいろと計測してくれました。
アレルギー反応だろうということで、医師のクリニックに運んで点滴治療をして
もらうことになりました。
車いすに乗らせてもらい、さらに車いすリフト付きの公用車に乗せてもらって、
クリニックに運ばれました。
とにかく息が苦しくて、「うーうー」とうなりつつ、
「職場の公用車を使って運んでもらっていることが申し訳ない」と伝えました。
「あなたはわるくないよ~。もうすぐ着くから大丈夫ですよ~」と優しい言葉を
かけてもらいました。
クリニックに着くと、奥の処置室に運ばれて、すぐに点滴をしてもらいました。
10分ほど経つと、すっかり楽になり、普通に呼吸ができるようになりました。
その後、点滴が終わり、普通に歩けるようになりました。
念のための心電図も取って、全て問題なしということになりました。
医師も看護師も、元気になってよかったね、と声をかけてくれました。
帰りは自分で歩いて車に乗ることができました。
その日のうちに回復し、自転車でクリニックまで行きお代金を払うことができま
した。
 その年の冬が来ました。
なんと、人生で初めてインフルエンザに感染しました。
しかも、仕事で遠くに行っている時に急に体調が悪くなり、知らないクリニック
に駆け込みました。
すぐにインフルエンザA型と診断されました。
予防接種で反応があったので、薬にも反応してしまうのではないかと心配しまし
た。
知らないクリニックの医師は、予防接種の時の顛末をきくと、薬の本を見せて丁
寧に説明してくれました。
そして、反応があっては困るので、今この場で最初の1錠をのんでみましょう、
ということになりました。
そのクリニックの近くには薬局がなかったのですが、薬局の方がわざわざ薬を届
けてくれました。
そして最初の1錠をのみ、処置室で安静にしていました。
特に何も反応が起こらなかったので、安心して帰ることができました。
行きは電車で来たのですが、帰りはタクシーにしました。
タクシーの運転士さんに、「インフルエンザA型に感染しています、すみません
」と言いました。
運転士さんは「いいんだよ、こういう時のためにタクシーがあるんだから」と言
って、
リラックスできそうな音楽をかけてくれました。
何とか無事に帰宅できました。
そのあと、医師の言ったとおりの日数で回復しました。
 予防接種で反応したのも、インフルエンザにかかったのも、人生初めての体験
でした。
けれど、いろいろな人の助けで事なきを得ました。
思い返せば、苦しかったことよりも、優しさのリレーに感謝したことのほうが、
ほんわかと記憶に残りました。
ーー
 ひとひらのシリーズは京都ライトハウス鳥居寮の文章講座の皆さんによるリレ
ーです。
今回のライターさんは他施設の歩行訓練士さんです。
昨年、文章講座の体験プログラムに参加され、訓練生さんたちと作品を共有され
ました。
そのご縁でゆうやみさんはバトンを手にされました。
はじめての挑戦が生んだほんわかとしたリレーです。
タイトル  ノックアウト
ペンネーム ブルームーン(30代女性  弱視)
 先日訓練生4人で焼き肉を食べに行きました。
2年ぶりの贅沢な時間でした。
ホルモンやカルビ、ハラミ…そのどれもとてもやわらかく口の中で溶けていきま
した。
実は私ホルモン好きなんです。てっちゃんすごくおいしかったです。
あのムニュっとした感じが大好きです。
どの部分もノックアウトされるおいしさでした。
取り皿をとろうとして手がグラスにあたり、みかんチューハイをこぼしてしまい
ました。
普段はお酒をのむことができません。
やっぱり焼き肉にはウーロン茶よりチューハイだよねー。
もったいないことをしてしまいました。
見えづらいとたまにそういうこともあったりします。
みんな優しい方たちばかり、ひたすらお肉を焼いてくださって
おかげで私は食べることに集中できました。(笑)
とってもおいしかったです。
ごちそうさまでした!!!
ーー
 久しぶりの嬉しい時間、おいしさと仲間のあったかさに包まれ最高ですね。
ノックアウトされちゃうくらいのおいしさ、それが記憶に残る幸福感につながっ
たのですね。
 はじめてと久しぶり、二つの体験はどちらもやさしい気持ちに支えられていた
ようです。
 それぞれの人生のひとひら、ほんのりと思いをつなぎながら、
次回のリレーエッセイへと続きます。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2019年5月10日
☆どうもありがとうございました。


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