メルマガ色鉛筆第150号「レシピエッセイ1」

タイトル 「レシピエッセイ1」
メルマガ色鉛筆編集チーム
 こんにちは、メルマガ色鉛筆編集チームです。
 「視覚障害の方はお口が達者ね」という声を時々耳にします。
というわけで、レシピエッセイを企画しました。
トークと味覚の達者ポイント全開でお届けします。
タイトル おふくろの味・私の味
ペンネーム スカイグラデーション(30代 女性 全盲)
 おふくろの味とは、大人になり家を離れて、
たまに帰った時に「あれが食べたい」とわがままを言って作ってもらう大好物の
こと。
「幸せ~」とため息をつく、あの感じ…。
 これは、当時中学生だった私とその周りの女の子たちのトーク。
その妄想力もすごいと思うが、
30を過ぎた私がほぼそのトークのようになっているのだから、間違った概念で
はないと思う。
 母方の家系は料理が上手だった。
母親いわく、「ロールキャベツがおふくろの味」。
弟は母のサバみそとみそ汁、私は母のチリビーンズを好物としている。
 祖母や母に比べて「超」がつくほど不器用だった私。
子どもの頃から強度の弱視だったことが関係しているのだろうと、今なら理解で
きる。
ピーラーもまともに使えなかった私がまさか料理に目覚めるとは、母も想像しな
かっただろう。
いろいろな意味で手遅れになる前に支援学校で家庭科の授業を受けていたことが
幸いだった。
その後のリハ訓練でも、家庭科での体験はかなり役に立った。
 とはいえ、料理も歩行も実践して覚えるもの。
たまにお菓子を焼く程度だった私がいよいよ一人暮らしを始めるという頃、
その準備として母の本格的な料理指導が始まった。
好きなものは食べたい時に自分で作りたい。
だからチリビーンズだけは絶対に覚えていくぞ!と、母の指導に前のめりで取り
組んだ。
 チリビーンズというだけあって、チリソースがきいたスパイシーな味。
恐ろしいことに、母のチリビーンズはどんぶり飯が3杯はいけてしまうのだ。
パンにもご飯にもパスタにもうどんにも合う。
グラタンソースにしてもおいしい。
 私はチリビーンズ作りを何度も練習した。
フライパンの周りに具が飛び散る、弟は掃除するたびに頭を抱えていた。
深く焦げにくい鍋でやれば具はこぼれないじゃないかと思いつき、弟にどや顔を
してみせた。
そんなふうに派手にキッチンを汚しつつ、がっかりポイントからひらめきとアイ
デアが生まれた。
 工夫が生まれ、レシピはマスターできたけれど、母の味はどうしても再現でき
なかった。
同じ材料を使って何度やっても、不思議とうまくいかなかった。
 そんな過程を経て、母直伝のチリビーンズは今では私流の味として確立された

辛みはややひかえめ、ニンジンのすりおろしやコンソメを入れる、それが私の味

どちらかというと、ミートビーンズに近いものになった。
すっかりわが家のおもてなしメニューの代表格となっている。
 いつかこの味を誰かが受け継ぐことがあるのなら、それはとても楽しいだろう
な…、今のところ予定はないが。
★チリビーンズの作り方
<材料>4人分くらい
合いびき肉 250グラム
タマネギ 小1個
セロリ 1本
大豆の水煮缶 1個
トマトの缶詰(無塩のもの) 1個
トマトピューレ 適量 (トマトピューレは、商品によって瓶やレトルト風のパ
ック等、入れ物や容量、濃縮度も様々ですが、一般的によく売られているもので
あれば2分の1は入れます)
ケチャップ・塩・コショウ・ブラックペッパー 各少々
チリソース 適量
<作り方>
①タマネギとセロリをみじん切りにする。
セロリは茎のみを使う。
②鍋でひき肉を軽く炒め、ほぐれてきたらタマネギとセロリを一緒に入れて炒め
る。
③塩・コショウ・ブラックペッパーで下味をつける。
④大豆の缶詰の水気を切って鍋に入れ、トマトの缶詰、トマトピューレを入れる

⑤ケチャップを入れて味を整える。
フライパンなら2周ちょっと、カレー鍋なら3周ちょっとするとほどよい。
⑥水気をとばしながら煮つめる。
⑦チリソースをお好みで入れてできあがり!
★一言ポイント
 20分から30分寝かせると、味がなじんでおいしくなります。
 ご飯にかけたりパンにはさんだり、パイの具にしたり、楽しみ方は無限大です

 編集後記
 おしゃべりが好きな人、お料理が好きな人、どっちも好きな人がおられますね

これまでも「味」にスポットがあたったレポートはいくつもありました。
ぜひ作ってみたいという声、皆さんのレシピが知りたいという声もありました。
そんな中、スカイグラデーションさんのエピソードと出会いました。
 というわけで、レシピエッセイのシリーズが誕生しました。
読む人、語る人、その思いをつなぐ編集部のタイミングが合って生まれたご縁で
す。
 見えない・見えにくいならではの工夫や伝え方を交えながら、
「これ、おいしいよ」という思いをまたいつか共有できたらと思います。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2019年3月8日
☆どうもありがとうございました。


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