メルマガ色鉛筆第134号「ひとひら」リレーエッセイ4

タイトル 「ひとひら」リレーエッセイ4
メルマガ色鉛筆編集チーム
 こんにちは。
メルマガ色鉛筆編集チームです。
 131号に続き、しりとりスタイルのタイトルでリレーエッセイをお届けします。
暮らしの中の体験ひとひら、記憶ひとひらをつなぎます。
「競馬」、「バンク」、「車」、「祭」、「りんご」、「『ごめん』と『ありがとう』」のバトンを受けて、
「上を向いて歩こう」、「Wednesdayの宇宙」というタイトルでのエッセイです。
タイトル 「上を向いて歩こう」
ペンネーム 白茶(40代 男性 弱視)
 リレーエッセイというものを書くことになりました。
「こんなんやってるんやけど」と声をかけられて、安請け合いしてしまったためです。
そのせいで長く苦しむことになりました。
どうしてもテーマが浮かんできません。
 今回、私は「う」から始まる題名のエッセイを頼まれました。
他に制限がなかったことで、かえって私には難しい課題になってしまいました。
それならばと、何か自分で制限をつくることにしました。
というわけで、今回は「う」から始まり「う」で終わる題名をつけることにしました。
「う」から始まる題名に沿った文章を考える苦労を他の人とも共有したいという思惑もありました。
 ここから私の迷走が始まりました。
どうせなら五七調の題名にしてみるとか。
上から読んでも下から読んでも同じ題名にしようとか。
 かくして、題名がいっこうに決まらない日々が続きました。
できもしない五七調は早々に投げ出して、とりあえず回文に力を注いでみました。
しかしながら、まあ、ろくなものが出てきません。
私の文才が足りないのか、根気が足りないのか、ちゃんと意味のある文章になりませんでした。
2か月ほど格闘したあげく、こちらも投げ出すことにしました。
結局最初に戻って、とりあえず「う」から始まり「う」で終わる題名を完成させることを優先しました。
 最初に浮かんだのは、
「上を向いて歩こう」
でした。
有名な歌の題名です。
この歌が好きな人も多いでしょう。
しかし、私には特別な思い入れがあるわけではありません。
それなのに、これをテーマにしてしまっていいのでしょうか?
だからといって、他に代案もありません。
 かくして、今回のテーマ、
「上を向いて歩こう」
が決定しました。
「浦島太郎」
とかよりはましなものに見えましたので。
 今回のエッセイの内容は、おおむねこれで終わりです。
「上を向いて歩こう」
にはほぼふれていません。
題名は『北京の秋』なのに、その中味は北京も秋もまったく関係がないという小説もありますし、
そんなエッセイもいいかなーなんて思ったもので。
 お粗末さまでした。
--
 「上を向いて歩こう」では、「涙がこぼれないように」と歌われています。
タイトルをしぼり出すのにこれだけのエネルギーを費やしておられます。
落語でいえば、「枕」ということになるでしょうか。
 このバトンを引き継いで、空を見上げながらのリレーです。
タイトル 「Wednesdayの宇宙」
ペンネーム 鬱金香(ウコンコウ)(40代 女性 弱視)
 春をゆく通勤電車の中。
隣に乗ってきた人が猛烈に鼻をすすり出した。
あっ、花粉症なんや。
自分がまだ発症してないものだから、
コートをはたいて電車に乗るというような配慮をしなかったことをちょっぴり申し訳なく思う。
 そんな私の隣で、彼(または彼女)は勢いよくカバンをあさる。
ガサガサ。
この音はキャンディの袋かな。
ほどなく、シトラスハーブ系の爽やかな香りが漂ってきた。
そして、彼(または彼女)の鼻をすする音はおさまった。
すごい!、効果てきめんや。
 私は、心の中でふふっと笑う。
なんや、私、目に頼らない人間ウォッチングがすっかり板についてきたやん。
そんな自分への戸惑いも違和感も、いつかなくなっていくんやろな・・・。
 仕事を終え、家路につく。
きょうの夕焼けはピンク系。
ピンクの残照に染まるまちに真珠色の灯がともり、
まるでどこかに妖精が潜んでいそうな幻想的な夕暮れ。
 高野川の橋のたもとから上流を見やる。
空の端が、どうなっているのかはっきりわからないまま薄紅(うすくれない)の
川面に注ぎ、
きらきら音をたてて足もとを流れゆく。
やがて夜のとばりが下りれば、その先には果てしない宇宙が広がる・・・。
本当は昼間だってそうなのだけど、日中は視覚にさえぎられて気づかないのだ。
 昔、何かで読んだ。
夜の闇は私たちを閉じ込めるものではなく、
私たちを宇宙に解放する透き通った存在だと。
見えなくなるということも、そうなのかもしれない・・・。
 暮れなずむ風景が涙ににじむ。
美しいこのまちの風景、本当はサヨナラしたくない・・・。
 でも、きっと大丈夫。
見えなくても、見えないからこそ感じることがきっといっぱいある。
人生はおっかなびっくり、楽しい宇宙旅行や。
さあ、週の後半も頑張ろう!
 涙をぬぐって天の川を渡り、歩き出した私の頭上で一番星がまたたいた・・・。
たぶん、ねっ。
--
 「う」から「う」、また「う」から「う」、
しりとりなのに停滞しちゃう、リレーなのに足ぶみ。
このユニークさ、偶然のめぐり合わせに拍手です。
浦島太郎さんもびっくりの玉手箱、上を向いて歩けば楽しい宇宙旅行だってあるかもです。
 見える・見えないなんてケセラセラ、思い描く空はいつだって自由。
それぞれの人生のひとひら、ほんのりと思いをつなぎながら次回のリレーエッセイへと続きます。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2018年10月5日
☆どうもありがとうございました。


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