メルマガ色鉛筆第133号「人生の伴走者(パートナー)とともに」

タイトル 「人生の伴走者(パートナー)とともに」
ペンネーム 賀茂川グリーンフラッシュ(30代 男性 弱視)
 レポートの要旨です。
 私は幼いころから水泳を続けており、体を動かすことが好きです。
数年前からランニングを始め、多くのランナー仲間ができました。
そして本年から、新たに人生の伴走者(パートナー)とこの先の未来を歩んでいくことになったのです。
 今思う「幸せの形」についてお話させていただきます。
 ここから本文です。
 私は2012年から、賀茂川パートナーズ(以後は「カモパ」と表記します)
というサークルに参加しています。
視覚障害ランナーと伴走者である晴眼ランナーで構成されるランニングチームで、
京都の賀茂大橋を拠点に月2回練習会を行っています。
強度の弱視の私でも、伴走者と一緒であれば安心して自由に公道を走ることができます。
 初めは趣味として気楽にやれたらいいなと考えていたのですが、
走る距離、回数が増えるにつれてマラソンに熱中するようになりました。
カモパを通じて、人間関係も一気に広がります。
一方的なサポートではなく、お互いに励まし合い、活かし合えるといった伴走の魅力にもはまりました。
 晴眼者である妻とも、4年前にこのカモパで出会ったのです。
当時、たまたまお互いの家が近所だったことから、
練習会以外の日にも月に数回のペースで一緒に走るようになりました。
山や川に恵まれた京都市には、ランニングスポットがたくさんあります。
長いときには30キロメートルほど、2人でいろいろな場所を走り、雑談もたくさん交わしました。
お互い出身地が京都から遠く、大学入学を機に京都に来たということ、
勤めているのが出版業界であることなど、共通点も多く、会話が弾みます。
妻は私より7歳年上なのですが、人がらからか年の差はあまり気にならず、
一緒にいて楽しいし、心が落ち着くと感じました。
食事に行くなどして、あれよあれよという間に距離が縮まっていきました。
 カモパの方々には非常に共感されることですが、
伴走で一緒に走るということが自然とデートのような状態になるのですね。
告白もOKの返事も、京都市北部の峠道をランニング中のことでした。
その後も、ゆっくり自分たちのペースでお付き合いを続けます。
順調のような、紆余曲折のような2年5か月の交際期間を経て、本年4月に入籍するに至りました。
 私たちの共通の楽しみは、旅行先で観光がてら走ること。
これまで、琵琶湖、天橋立、南紀白浜、宝塚、台北市などをランで巡りました。
自転車ほどの速度はないものの、お金がかからず、そこそこの距離を移動できるという利点があります。
グーグルマップで走るコースも自由に設定可能。
走ったあとは温泉でさっぱり。
今でも貴重な旅の思い出です。
 交際期間最後の丸1年は、同棲していました。
それまではお互いの家を行き来していたのですが、
今後に向けて実際に一緒に住んで様子を見てみようということになったのです。
 お互い会社員なので、家事は分担しています。
ありがたいことに妻は料理が得意で、ご飯や弁当をつくってくれます。
私の担当は、主に洗濯や掃除、皿洗いです。
とはいうものの、完全にはできていません。
 一人暮らしのときと比べると家事の量は倍以上に増えるので、慣れるまではたいへんでした。
仕事や運動を終え、へとへとになって夜遅くに帰宅したとしても、そこには洗濯物が待っています。
翌日が晴れなら、やはりしておきたいところ。
妻は服を表裏逆にして洗濯機に入れる癖があり、いちいちもとに戻して干さなければいけません。
今は慣れましたが、ユニクロのブラトップなど、中身が外にとび出して最初はわけがわかりませんでした。
「自分の服は自分で洗濯しろやー!!」と言いたい衝動にかられますが、
「じゃあ、お前のご飯つくらんぞー!!」と返されるのがオチなので、無心で黙々とやるしかありません。
 基本的には穏やかな日々を過ごしてきましたが、ときには食事に絡むことなどでケンカもあります。
私は、食事をしながら話すことが苦手です。
手巻き寿司など、複雑で食べづらいもののときは、黙々と食べています。
話をしながら楽しく食事をしたい妻はシュンとなり、そのあと怒り出します。
 あるときは、私の誕生日ということで、妻が豪華な料理をつくってくれました。
しかし、それを食べるというとき、こともあろうに私はテレビに夢中になりすぎ、
妻を激怒させたあげく泣かせるという失態を犯したのです。
せっかくの料理は台無し。
ケンカというより、私の失敗ですね。
 また、本年秋には挙式、披露宴、旅行を控えており、現在はその準備、相談に追われる毎日を送っています。
たびたび互いの主張はぶつかり合いますが、
こうした失敗により新たな気づきがあり、改善もできます。
今後よい関係を築いていくために必要なことだと感じています。
 よく「幸せですか?」と聞かれ、私は「はい、幸せです」と答えます。
最近、この「幸せ」というのは、「楽」ということとはむしろ逆だと感じています。
登り坂を自転車で登っていく、あるいは走って駆け上がっていくようなものだと感じます。
苦しいけれど、あきらめずに努力し続けるということです。
それでも、すぐ傍にパートナーという存在があるからこそ頑張れる。
 坂の上にある夢や目標を目指し、今後も2人で手と手を取り合い、
自分たちらしく一歩一歩歩んでいきたいです。
 編集後記
 自然なこと、気がついたら相手の呼吸やペースが自分のそれとマッチすること。
2人で走るためには、この「自然」が必要になります。
これは、見える人も見えにくい人も見えない人も、誰と誰のペアでも必要になることです。
一緒に走る、歩く、仕事をする、遊ぶ、どんな場面にもこの「自然」の共有があると、
誰が誰のために共生するのかという問題ですら、わからないほどの普通になるのかもしれません。
 ぶつかることから、ときには新しい自然の形がつくられるかもしれない。
お2人の坂の上に広がる世界、またいつか色鉛筆で共有できたらと思います。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2018年9月28日
☆どうもありがとうございました。


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