メルマガ色鉛筆第87号「映画にまつわるエトセトラ 第2弾」

タイトル「 映画にまつわるエトセトラ 第2弾」
メルマガ色鉛筆編集チーム
 こんにちは、メルマガ色鉛筆編集チームです。
 映画レポート第2弾は、ユニークなアイデアと発想力を持つ男性2名の登場で
す。
第1弾に引き続き、鑑賞スタイル別体験レポと映画にまつわる思い出レポの2本
立てをお届けします。
 映画の楽しみ方いろいろ、スタイルその2は副音声なしでの鑑賞レポートです。
タイトル 映画を観るのに予習や復習をした話
ペンネーム 夜色鷹人(40代 男性 全盲)
 全盲の視覚障害者が、副音声の付いていない映画を観た経験をお話します。
 そこそこわかる映画もあれば、あまりわからない映画もあります。
あまりわからない映画のために、ノベライズ版の本を活用して予習をする、復習
をするという方法もやってみました。
見えなくなってから、映画館に行ったことは何回かあります。
まだ副音声上映がなかったころは、
映画を観るとは、つまりは音だけ聞いてわかる範囲で楽しむというものでした。
 観に行ったけどあまりわからなかったのは、『もののけ姫』でしたね。
かなりよくわかったのは、『ハウルの動く城』でした。
ハウル、どうしてわかったといえるのか。
しばらくしてから副音声付きの上映会があって、それにも行ったんです。
そこで答え合わせができたのでした。
 その中間で、半分わかったくらいかなと感じたのは『風立ちぬ』でした。
この違いは、作品の作り方によるのだと思います。
画面を見られない視覚障害者が映画を楽しむためには、やはり副音声を付けるの
がよい方法だと思います。
 『もののけ姫』は、その後もすっきりしないままでいました。
一応観たんだけどなぁという感じでした。
それを変えてくれたのは本でした。
映画には、作品によっては原作の本があります。
それだけではなくて、作品によってはノベライズ版、映画を小説にした本が出て
います。
このノベライズ版が点字かデイジーになっていれば、視覚障害者でも読むことが
できます。
ノベライズ版の『もののけ姫』を読んで、そういうことだったのかと中身を知る
ことができました。
さらに副音声付きの金曜ロードショーで観て、
『もののけ姫』は今やもっとも好きな映画の一つになっています。
 去年、興味を持ったのは『ズートピア』という映画でした。
でも、観るのは副音声が付いてからだなぁと思っていました。
副音声、付くかなぁ、付かないかなぁ、いつになるだろうなぁとも思っていまし
た。
 そんなとき、サピエ図書館の新着情報の中に『ズートピア』の本を見つけまし
た。
早々とノベライズ版が出て、早々と点字にもしてくれていて、驚きました。
それを読みました。
映画のシーン、情景を思い描きながら読み進めました。
そして、後日、映画館に行って映画のほうも観ました。
本で予習をしている分、次はどうなるの?、どうなるの?という楽しみはないわ
けですが、
何が起こっているの?、何が起こっているの?という苦しみはありません。
まあ、一長一短といえるかもしれませんが、
視覚障害のハンディ、不利な点の多い映画に対してこうやってどうにかこうにか
ついていくのも一つの方法、
一つの楽しみ方だと思います。
とにもかくにも、『ズートピア』を観ることができてよかったです。
 最後に、副音声のことで一つ思うこと。
副音声が、次に起こることを映画の展開よりも先に伝えてくれることがあります。
先に言われちゃうとなぁと感じて、ぜいたくなんですけどね、映画の楽しさに影
響します。
 映画レポート2本目は、映画にまつわる思い出その2です。
初めての映画館、色濃く残る不思議体験レポをどうぞ。
タイトル 殺し屋と父と母
ペンネーム 銀影(40代 男性 弱視)
 僕が観た映画で一番印象に残っているのは、
007シリーズのロジャー・ムーアが出ていたものだったと思います。
ストーリーはあまり覚えていません。
 007シリーズの主人公ジェームズ・ボンドはスパイで、
いろいろなことに巻き込まれたり、敵との恋愛模様があったりします。
 007シリーズには、とにかくスパイグッズがいっぱい出てきます。
その中で僕がすごいと思うのは、ボールペンが爆弾になっているものです。
ボールペンをカチカチと鳴らして爆弾を操作します。
起動は2回続けて鳴らす、解除は3回続けて鳴らす。
その回数を数えながら相手と会話しつつ、
ピンチを切り抜けたシーンは結構ハラハラドキドキでした。
 007の映画に出会ったのは、僕がまだ5歳のときでした。
父が初めて僕を映画館に連れていってくれたんです。
僕はてっきりアニメかなと思ってウキウキしていましたが、
行ってみたら007、5歳の僕にはチンプンカンプン、難しい映画でした。
しかし、観ているうちにだんだんその世界観に引き込まれていきました。
そんな自分が不思議でした。
家に帰って母に一生懸命説明をしていたことを思うと、やっぱり夢中で観ていた
んでしょうね。
 でも、母に言わせるとその説明がおかしいらしくて、笑われました。
何がおかしいのかと母に聞くと、
僕は、主人公でもなくストーリーでもなくて、出てきた殺し屋のことばかり話し
ていたそうです。
確かジョーズという名の殺し屋だったと思います。
なぜそのキャラに興味を持ったのかというと、
セスナから落とされても無傷だったりする姿、
列車の中で格闘になり電球が割れて感電しても、
何事もなかったように服をパンパンとはたいて立ち去る姿が幼い僕にはかっこう
よく見えたのかもしれません。
僕は、一日中その殺し屋のことばかり話していました。
それが母のツボにはまったらしく、大笑いされました。
後からテレビでその映画を観たときでさえ、そのジョーズの話しか思い出せませ
んでした。
 そうだ!、もう一つ思い出したことがあります。
そのジョーズは銀歯で、ニッコリ笑うとフランケンみたいな風貌だったんです。
 初めての映画館のことを思い出していたら、楽しくうれしかった記憶も一緒に
出てきてくれました。
ストーリーはさておき、それにしても、
頭に浮かぶのは殺し屋と父と母とのひとときだなんて、記憶って不思議なもので
すね。
※「殺し屋ジョーズ」豆知識
 殺し屋ジョーズとは、人気スパイ映画007シリーズの『私を愛したスパイ』
(1977)、『ムーンレイカー』(1979)の2作品の中でジェームズ・ボ
ンドに対抗する最強の悪役。
 ジョーズを演じたリチャード・キール(Richard Kiel 1939~2014)
はアメリカの俳優。
身長2メートル18センチ、体重143キロという巨漢。
007シリーズ2作に同じ殺し屋として連続して登場するのは後にも先にもこの
キールだけ。
セリフも、『ムーンレイカー』のラストの一言だけであったことが印象深い。
編集後記
 あえて副音声なし、予習・復習で何度も楽しむという鑑賞スタイルは、
作品を深く味わう、スローならではのよさがありますね。
原作本やノベライズ版がサピエ図書館に素早くアップされているからこそ、
副音声がなくても最新作を映画館で楽しむことができるわけで、
これってアナログとテクノロジーの融合あってこそなせる技ですよね。
 映画って、何が色濃く心に残るか、人それぞれですね。
子どもにとっては、「なんだかすごいぞ!」という強烈なシーンがその映画を語
るべきものとして残るようです。
ジェームズ・ボンドじゃなくて、殺し屋一色の初映画館、
それがご両親との思い出に通じているんですね。
 このお2人の着眼点、ユニークで楽しいですね。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2017年2月3日
☆どうもありがとうございました。


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