メルマガ色鉛筆第85号「映画にまつわるエトセトラ 第1弾」

タイトル 映画にまつわるエトセトラ 第1弾
メルマガ色鉛筆編集チーム
 あけましておめでとうございます。
メルマガ色鉛筆編集チームです。
 昨年も読者の皆様とたくさんの思いや情報が共有できました。
ありがとうございました。
今年もボチボチがんばりますので、どうかよろしくお願いします。
 今年最初のテーマは、ズバリ映画。
映画館、テレビ、DVD、デイジーなど、鑑賞スタイルはあれこれあります。
また、映画にまつわる思い出も人それぞれ。
 というわけで、今号より、鑑賞スタイル別体験レポと映画にまつわる思い出レ
ポの2本立てをお届けします。
 映画の楽しみ方いろいろ、スタイルその1はシネマデイジー鑑賞レポートです。
 シネマデイジーとは、
映画のサウンドに登場人物の表情や動作、画面の様子を説明する音声解説を付け
てデイジー編集したものです。
タイトル 不動の1位!『ニューシネマパラダイス』
ペンネーム セピア色に染まるキス(40代 女性 弱視)
 私のお気に入り映画ベスト1は、『ニューシネマパラダイス』です。
ラストシーンではじわっと温かいものが心に広がり、
思わず主人公と同一化してしまいそうになったあの感覚は20年経った今も忘れ
ることができません。
 舞台はイタリアのシチリア島、貧しい家に生まれたトトと映写技師のアルフレ
ードとの友情を土台に、
トトの少年期、青年期、初老までを描いた映画です。
ある映画館を舞台に巻き起こるストーリー、
そこで上映される作品を通して戦後の社会の流れが映し出されるのも印象的です。
 時は移ろい、映画館を取り囲む町の人々の思いも変遷していきます。
そんな中でも変わらないもの、変わらない思いがあること、
そしてこの世を去っても残すべき願いなど、
時の流れと人生を考えさせられる映画です。
 私がこの映画を初めて観たのは20代半ば、一緒に観た彼も感動していました。
エンディングロールが消えた後、ため息とともに深く満たされた思いがありまし
た。
以来、私の映画ベスト1は『ニューシネマパラダイス』になりました。
 その前は、『戦場のメリークリスマス』だったか、『フィールドオブドリーム
ズ』だったか、
いわゆるスケールの大きな感動もの映画をベスト1としていた気がします。
 見えない今、シネマデイジーでこの映画を再度観ました、というか聴きました。
これまでにもいろんな映画をシネマデイジーで体験していましたが、この映画を
聴くことにはためらいがありました。
見えにくかったとはいえ、実際にこの目で観たかつての感動が薄れてしまうかも
しれない、そんな不安があったからです。
いつまでも不動の1位をキープしておきたい、なぜかそんな思いがありました。
でも、思い切って聴いてみることにしました。
自分がどんなふうに感じるのか、忘れてしまっている細かいモチーフをどれだけ
思い出せるのかということに単純に興味がわいてきたのです。
もう一度観ても感動できないかもしれないという不安より私の好奇心のほうが勝
りました。
 案の定、いろいろギャップはありました。
思い出せるシーンもあれば、ゼロから描くイメージをつなぐシーン、
「そんなエピソード入っていたっけな?」というほど完全に抜け落ちてしまって
いるシーンもありました。
でも、大好きないくつかのシーンは鮮明に思い出せました。
 そして、初めてわかったシーンもありました。
もともと弱視の私には、コントラストの低い像が判断できませんでした。
そもそも私には、一番印象的ともいうべきシーンが明確にとらえられていなかっ
たのです。
 映画館を追い出された民衆の声に応えるために、
映写室からガラスごしに向かい側の建物の壁に映画を映し出すというシーンがあ
ります。
映画が映し出されていることはぼんやりとは見ていたけれど、
どんなシーンだったなんてことは当時の私には見えなかったのです。
でも、民衆がとても楽しそうだったことなどから雰囲気だけを想像していました。
 そして、私がこの映画で一番好きなラストシーンは観た感覚と変わらずにあり
ました。
主人公のおだやかな表情がちゃんと私の心に浮かびました。
何もかも受け止めて、今につながる自分やかけがえのない人を思い、人生の深み
を感じるシーンです。
 この映画の底にあるもの、大事なものは消えない、心震える思いは消えない、
自分の中に生まれた情熱を支えてくれた人たちへの感謝など、
「ずっとそこにあるもの」を感じることのできる映画でした。
 副音声で『ニューシネマパラダイス』のラストシーンの温かさ、主人公の表情
を描くことができたことで、
私の好きだった映画をシネマデイジーで体験してみたいと思えるようになりまし
た。
次は『レインマン』、『レオン』、『フォレストガンプ』を楽しみたいと思いま
す。
さて、どんな気づきがあるか楽しみです。
 映画レポート2本目は、映画にまつわる思い出その1です。
時代の流れと家族への思いがこめられた体験レポをどうぞ。
タイトル 母へ、息子へ
ペンネーム レモンイエロー(70代 女性 弱視)
 私が育ったのは山奥の村でした。
映画館に行くにはバスで1時間もかかりました。
 当時、何か月かに一度、学校の講堂でニュース映画が上映されていました。
そこには村じゅうの人々が集い、ワイワイガヤガヤと感想を述べ合ったりしてい
ました。
小学校に上がる前の幼い私は、映画に連れていってもらえるだけでお祭りのよう
な気持ちになりました。
一つには、病弱な母にくっついていられる、その感じが心地よかったからでしょ
うか。
ニュースの内容は、戦後の日本がどんなに勢いよく復興の道を進んでいるかとい
うようなものだったと思います。
それが私にとっての映画との最初の出会いでした。
 そして9歳の春、私は京都に移り住んだのです。
京都での映画との出会いは、ただただ「驚き」の一語でした。
 その頃(昭和30年)、情操教育としてだったのでしょうか、学期に一度くら
いの割合で映画館での映画鑑賞会がありました。
『緑はるかに』という総天然色(当時はカラーとはいいませんでした)の美しい
画面でした。
残念ながらストーリーは全く覚えていませんが、主演はデビュー間もない浅丘ル
リ子でした。
当時の彼女は可憐で美しく、オーラがありました。
彼女の大きな目で見つめられたと感じるだけで幸せな気持ちになれるほどでした。
モノクロのニュースしか知らなかった私には天と地がひっくり返ったような衝撃
でした。
体調がよくない母を相手にどんなにたくさんしゃべったことか!
これも、私にとっての母につながる映画の思い出です。
 母が亡くなってからしばらくは映画を観ることはありませんでした。
 時を経て母となった私は、息子と映画に行くようになりました。
息子と観た映画は、『風の谷のナウシカ』、『となりのトトロ』、『銀河鉄道9
99(スリーナイン)』などのアニメでした。
同じ時間と場所を幼い息子と共有できる幸福感は、母との思い出とも重なるもの
でした。
「映画って楽しいな」と感じ、ホンワカとした気分になってくれたら、それで十
分!
そんな思いから、映画館での時間を楽しんでいたのは息子より私のほうだったの
かもしれません。
 見えにくくなった今、映画を観に行くことから遠ざかっていましたが、
バリアフリー上映会があることを教えていただき、「また楽しみが増えたな」と
喜んでいるところです。
編集後記
 シネマデイジーは、映画を手軽に楽しむことができる鑑賞スタイルの一つです。
手軽なのに、なかなか手が出せなかったセピア色さんでしたが、
思い切ってトライしたことで世界が広がりました。
レモンイエローさんは、映画がつなぐ母への思い、自分が母となってからの息子
への思いを映画館を舞台に語っておられます。
封じ込められた大切な記憶、映画館の中には何か特別な力があるのかもしれませ
んね。
それは偶然にも、映画『ニューシネマパラダイス』が語るものに通じている気が
します。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2017年1月6日
☆どうもありがとうございました。


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