メルマガ色鉛筆第119号「見えないのではなく見てはいけない」

タイトル 「見えないのではなく見てはいけない」
ペンネーム 黒っく(40代 女性 弱視)
 レポートの要旨です。
 視力も視野もあるけれど見ることができない、眼瞼痙攣のお話をしたいと思い
ます。
 私はその当事者です。
白杖を使って歩いています。
パソコンもスマホも画面読み上げ機能を用いています。
ですが、障害者手帳は取れないのです。
「眼球使用困難症と闘う友の会」を結成して、私たちを取り巻く状況の改善に取
り組んでいます。
 ここから本文です。
 私は2010年に、ジストニアの一種である眼瞼痙攣という病気になりました。
極度の光過敏があり、光の刺激で目の周辺の筋肉が痛くなったり、体調不良に見
舞われたりします。
中でも動く光に弱く、とにかく強い光と動く光を目に入れないように生活してい
ます。
外では電気熔接サングラスやアイマスクをして、日傘前倒しで、そして白杖で歩
きます。
室内ではカーテンを閉めていますし、パソコンもスマホも画面読み上げ機能を用
いています。
 ところで、私の光過敏は脳の機能障害が原因です。
脳に機能障害があると、疲れやすかったり、痛みや音、においにも過敏になる傾
向があり、
私にもそのような症状があります。
また、無理をして目を使うと、その時に限界を感じなくても、後から何日間、何
週間も体調をくずし、
へたをすると悪化したまま戻らなくなります。
そのため、目で見ることに対して強い自制心が求められます。
 しかし、視力・視野以外の障害ということで障害者手帳は取れず、障害年金も
受けられません。
盲学校に通って鍼灸師を目指そうとしましたが、受験も断られてしまいました。
現在、眼瞼痙攣に対しては年金は障害手当金と定められており、最高でも3級ど
まりと決まっているのです。
 昨年の2月に、井上眼科の若倉医師が私のような制度の谷間にいる視覚障害者
に患者会をつくろうと呼びかけをされ、
私もすぐに応じてさっそく活動を始めました。
現在、その呼びかけでできた「眼球使用困難症と闘う友の会」という患者会で障
害者手帳を認めてもらう活動などをしています。
 厚労省や視覚認定見直し検討会の構成員に手紙を出すなどした結果、
厚労省は「視力視野以外の視覚障害の障害を含めた調査・研究会を発足する」と
いうことを決定しました。
また、昨年11月には、NHKの「視覚障害ナビ・ラジオ」で眼球使用困難症が
取り上げられました。
 ところで、私は国に助けてほしいと訴えているだけではありません。
生活の質を自ら上げることにも尽力しています。
 まず外出ですが、私は自分の意志で目を開けないようにせねばなりません。
ですので、見たいけど見てはいけないという葛藤との戦いがありました。
 例えば道を歩いていても、車や自転車が近づいてくると、
それらを視界に入れないようしっかりと目を閉じねばなりませんでした。
普通はそういう時こそそれらの存在を目で確認したいところですが、心して見な
いように努めねばなりませんでした。
過去形で書いているのは、
今はすっかり慣れて、アイマスクをつけっぱなしで歩いていてもそれに気づかな
いレベルにまで歩行スキルがついたからです。
 初期の頃は、この「目を使いたい」という誘惑に勝つため、
駅構内の点字ブロックのあるところをアイマスクをつけて歩いて盲人歩行の練習
をしました。
そうこうするうちに、電車の乗り降りもアイマスクをつけっぱなしで行うように
なりました。
そしてある時、数年の間歩くことができなかった地元の商店街を、スマホのナビ
を使いながらアイマスクで歩いてみました!
すると、目的のお店にたどりつくことができたのです!
この感動は今でも忘れません。
 2年前にはかなり強力な遮光効果のある電気熔接サングラスを使い始めたので、
アイマスクを使うことは少なくなりました。
それでも電車に乗る時は、外の光を点滅した動きとして感知してしまい、とても
苦しくなるので、アイマスクをつけます。
 また、パソコンやスマホの画面読み上げ機能を用いた操作も習得しました。
これもやはり見たいけど見てはいけないという葛藤に勝つために、画面を非表示
にして使うことにしました。
おかげで今ではIT機器に強くなって、読書やネット三昧の生活ができています。
 しかし、私は希なケースです。
多くの仲間は盲人スキルを身につけることができず、国からも助けてもらえず、
きわめて制限された生活を余儀なくされているのです。
 よろしければ、以下のキーワードでネット検索をしてみてください。
今後の私たちの活動を応援していただければ幸いです。
眼球使用困難症と闘う友の会
視覚障害ナビ・ラジオ 眼球使用困難症
眼瞼痙攣 障害年金
 編集後記
 メガネやコンタクトレンズをしている人も含めて世の中のほとんどの人は目が
見えます。
そして、見えない人、見えにくい人がいます。
それだけでなく、見てはいけないという人がいらっしゃるのを、みなさんはご存
じでしたでしょうか。
私は、今回レポートしてもらうまで知りませんでした。
 人のつながりが、いろんな人の存在や思い、社会の問題に気づかせてくれます。
そして、社会にいろんな人がいる意味を、いろんな人がいることでどのように社
会が豊かになるかを、
いっしょに学び考えていきたいです。
-- このメールの内容は以上です。
発行:   京都府視覚障害者協会
発行日:  2018年4月13日
☆どうもありがとうございました。


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